【AIが人間を超越】シンギュラリティ(技術的特異点)はいつ来る?人間社会への影響は?

人工知能(AI)の未来について語るうえで外せないのが、「シンギュラリティ(技術的特異点)」の到来です。シンギュラリティとは「AIが人類の知能を超える時点」を指し、人類社会に多大な影響を及ぼすとされています。本記事では、シンギュラリティの定義や未来予測、影響、実現性について網羅的に解説します。人工知能がもたらす未来について深く知りたい方は、ぜひご覧ください。

目次

シンギュラリティ(技術的特異点)とは?

シンギュラリティ(技術的特異点)とは「AIが人類の知能を超える時点」のことです。

そもそも英語のSingularity(シンギュラリティ)は「特異点」という意味を持ち、数学や物理において「他と同じルールが適用できなくなるポイント」を指します。数学では「分数の分母が限りなくゼロに近づく(=計算結果が無限大に近づく)状態」、物理では「光さえも脱出できないほどの重力がかかる状態(=ブラックホール)」などに用いられる概念です。

しかし近年、特にIT業界においてシンギュラリティは「技術的特異点」を意味するようになりました。技術的特異点とは、AIが人類の知能を超え、人間の社会や生活を大きく変える時点を指します。人工知能研究の世界的な権威である米レイ・カーツワイル博士が2005年に提唱したのが始まりで、日本でも2016年にソフトバンクの孫正義氏が言及したことで話題となりました。

シンギュラリティは2045年に訪れる?

シンギュラリティ(技術的特異点)を最初に提唱したレイ・カーツワイル博士は、シンギュラリティが起こるのは2045年だと予測しています。さらにシンギュラリティの前段階として、2029年にはAIの知能が人間と同等レベルに追い付き、2030年代には人間の脳がクラウドと直接つながって記憶や思考をデータとしてやり取りするようになるとも論じています。

しかし、シンギュラリティがいつ到来するのかについては、有識者の間でも意見が分かれています。2012年に開催された「シンギュラリティ・サミット」で調査結果を発表したスチュアート・アームストロング氏は2040年との予測、スーパーコンピューター開発者の齊藤元章氏や神戸大学名誉教授の松田卓也氏は2030年との予測です。また、スタンフォード大学教授のジェリー・カプラン氏は、シンギュラリティの到来自体を否定しています。非常に複雑な未来予測になるため、有識者の間でも大きく意見が分かれていると言えるでしょう。

シンギュラリティの影響

シンギュラリティが仮に到来するとした場合、人間社会にどのような影響を及ぼすのでしょうか?車の自動運転や工場の生産機械など、現代社会においてすでにAIは大きな役割を果たしつつあります。ここでは、雇用・社会制度・人体という3つの側面で、シンギュラリティがもたらしうる影響について紹介します。

雇用に対する影響

シンギュラリティ(技術的特異点)の到来によって、最も大きな影響を受けるのが雇用でしょう。たとえば、自動運転技術はすでに大きな進化を遂げており、実用試験が繰り返されています。結果として、タクシーやトラックの運転手などが不要になる可能性は高いでしょう。その他にも、以下のような職種はAIへの代替が予測されます。

  • 経理などの事務職
  • レストラン・カフェのスタッフ
  • 店舗のレジ係
  • スポーツの審判

野村総合研究所が英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授らと行なった共同研究では、2025年~2035年にかけて日本人の職業のうち49%がAIで代替可能になるとされています。

一方で、ホスピタリティが求められる高度な接客業や、創造性が求められるアーティスト職などは、シンギュラリティ以降も人間の仕事として残るという説が一般的です。いずれにしても、AIの台頭によって雇用環境が大きく様変わりすることは間違いないでしょう。

社会制度に対する影響

シンギュラリティによって人々の雇用が失われると、社会制度にも大きな影響を及ぼします。具体的には、ベーシックインカム制度の導入が必要になるでしょう。ベーシックインカム制度とは、全国民に対して無条件に一定の所得を分配する社会制度のことです。AIの台頭によって失業者が増えたとしても、ベーシックインカムがあれば最低限の生活は確保されます。

一方で、無条件に一定の所得が与えられる社会では、働かなくても生活ができるため人々の労働意欲が失われます。また、大量の失業者を養うための財源確保も大きな問題となるでしょう。

人体への影響

シンギュラリティは、人体にも大きな影響をもたらす可能性が高いです。具体的には、臓器を人工物で代替するなど、医療面での活躍が期待されています。現時点でも、すでに人工関節や人工心臓など、医療現場に取り入れられているAI技術は存在します。

また、AIの発達により人間の脳や肉体に関する研究も大きく進歩するでしょう。シンギュラリティ以降は、人間の記憶や思考などをコンピューターのように操作できるとも言われています。「勉強をしなくても、AIが自動で新たな知識を習得してくれる」などという日が来ても不思議ではありません。

シンギュラリティはあり得ないのか?実現性の根拠

シンギュラリティの実現性について論じるには、その根拠となる「ムーアの法則」「収穫加速の法則」の理解が不可欠です。どちらの法則も「技術の進歩は指数関数的に進む」という考え方に基づいています。ここでは、それぞれの成り立ちやシンギュラリティとの関連性について解説します。

ムーアの法則

ムーアの法則とは、半導体メーカーである米インテルの創業者ゴードン・ムーア氏が提唱した「半導体の集積密度が1年半~2年で2倍になる法則」のことです。一定期間で2倍になり続ければ、「4倍、8倍、16倍…」と半導体の能力が指数関数的に上昇することになります。

実際には、微細加工技術に限界が来ると予測されることから、半導体の能力が無限に進化し続けるとは言えません。しかし、ムーアの法則自体はテクノロジー全般に当てはまると考えられています。そして、ムーアの法則の適用範囲を広げることで「収穫加速の法則」を生み出したのが、シンギュラリティの提唱者レイ・カーツワイル博士です。

収穫加速の法則

収穫加速の法則は「あるテクノロジーのイノベーションが次のイノベーションの助けとなることで、テクノロジーの進化が指数関数的に進む」ことを指します。シンギュラリティ(技術的特異点)の到来を最初に唱えたレイ・カーツワイル博士が生み出しました。

収穫加速の法則によれば、人工知能(AI)の進化は直線的ではなく、時代が進むにつれて指数関数的に急加速することになります。結果として、AIの爆発的な進化が起こり、シンギュラリティ(技術的特異点)の到来につながるというわけです。

まとめ

シンギュラリティ(技術的特異点)とは「AIが人類の知能を上回る時点」を指し、その結果として雇用・社会制度・人体に大きな影響を及ぼすことが予測されています。その根拠としては、テクノロジーの進化が指数関数的に進むとする「収穫加速の法則」が挙げられます。

シンギュラリティがいつ到来するのか、または到来しないのか、専門家の間でも意見は大きく分かれています。しかし、人類社会に大きな影響を及ぼすからこそ、今後も人工知能(AI)分野の進化から目が離せないと言えるでしょう。10年後、20年後には、今の私たちには想像もできないような世界が広がっているかもしれません。

この記事を書いた人

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