「強いAI」「弱いAI」とは?2つの違いを具体例で紹介!

近年のAI研究の進歩は目覚ましいものがあります。その中で、人工知能を「強いAI」と「弱いAI」に分類することがあります。強いAIとは、フィクションの小説やアニメの中で出てくるような汎用性の高いAIです。一方で、弱いAIとは、特定の領域の能力に特化しているAIで、人間を凌駕するようなケースも出てきています。

今回は、そんな強いAIと弱いAIの特徴について具体例を用いて解説します。将来的なシンギュラリティの可能性についても考察していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

AIは自ら学ぶ時代に

AIは画像や言語、ゲームの思考などを自ら取り込んで学習することができます。この能力を「ディープラーニング」と言います。一昔前のAIは、人間がプログラミングを行うことで新しい知識を取り入れていました。そのため、人知を越える能力を発揮することが難しかったのです。一方で、ディープラーニングの進化に伴って、画像認識や音声認識の分野では、すでに人間の能力をはるかに越えているAIが誕生しています。今後も様々な分野でAIが人間の能力を越えることが期待できるでしょう。

強いAIの特徴と具体例

強いAIとは、人間と同じように現実社会の複雑な問題を解決できる、汎用型の高いAIです。強いAIを持つロボットは、SF作品やアニメなどで近未来の友達や家族として描かれることが多いですが、いまだに実現には至っていません。ここからは、強いAIの特徴と現状の分析をしていきます。

強いAIとは汎用型AI

AIには、「強いAI」と「弱いAI」という分類のほかに、対処できる問題の複雑性に焦点を当てた「汎用型AI」と「特化型AI」という分類が可能です。汎用型AIとは、広範囲の課題を総合的に考えて、最善の行動を選択することができるAIです。人間の情報処理能力に比較的近いものとして考えられています。今日では、強いAIのことを汎用型AIとして、ほとんどイコールのものとして捉えるのが一般的です。

具体例はドラえもん

強いAIの具体例の一つが、国民的アニメのキャラクター「ドラえもん」です。ドラえもんは未来から来た猫型ロボットで、のび太君が抱えている悩みや日々発生する問題に対して、秘密道具を活用して対処します。要因が複雑に絡まりあっているような問題でも、総合的に考えて適切な対処方法を提供するドラえもんは、強いAIの典型例です。ときに人間のように感情的になり、友情や絆を正しく理解しているドラえもんはまさに人間そのものでしょう。

現状:実現していない

では、現状ドラえもんのような強いAIは生まれているのでしょうか。結論から言うと、そのようなAIはいまだに実現していません。その理由は、AIにフレーム問題があるためです。

フレーム問題とは、人間のプログラミングによって与えられた知識の範疇でしか判断できないAIにとって、現実世界に起こりうるすべての可能性には対処できないという問題です。人間は無意識のうちに、目的と関係のある情報と関係のない情報を、瞬時に見分けて最終判断を下します。一方で、AIにとってはその判別が難しいため、余計な要因まで考えてしまったり、逆に大切な要因を無視した行動をとってしまいます。ドラえもんのような人間的な判断が下せるAIは、少なくともこのフレーム問題が解決しないと実現することはないでしょう。

弱いAIの特徴と具体例

弱いAIとは、強いAIの対称となるものです。事前に学習した分野の範囲内でなら、人間の能力を超える力も発揮することができるAIのことです。すでに弱いAIは、私たちの身の回りにたくさんあります。ここからは、強いAIの特徴と現状の分析をしていきます。

弱いAIとは特化型AI

汎用型AIに対して特化型AIとは、特定の分野に関して適切に処理できる一方で、想定外の状況が生まれたときの対処については苦手なのが特徴です。強いAIが世の中に存在していないため、現時点でAIと呼ばれるものはすべて弱いAIということになります。今日では、弱いAIのことを特化型AIとしてほとんどイコールで捉えるのが一般的です。

具体例はプロ棋士に勝った将棋ソフト

弱いAIの具体例として、2017年5月20日にプロ棋士である佐藤天彦名人に勝利したコンピュータ将棋ソフトが挙げられます。9時間の激闘を制して、このAIが当時最強との呼び声が高かった現役プロ棋士に黒星をつけたというニュースは、日本国内のみならず世界中で話題となりました。

引用:朝日新聞デジタル「佐藤天彦名人、人工知能に敗北決定 将棋・電王戦」

このソフトは、歴代のプロ将棋の指し方をディープラーニングにより研究しつくしており、あらゆる局面に対して統計学的に最も効果的な一手を選択し続けることができます。そのため、AIが人間を超越した能力を手に入れたと考えることができます。

しかし、一方でこの将棋ソフトは、相手の感情を正確に読み取る能力はありません。あくまで将棋を指すという行為にのみ特化している弱いAIなのです。

参考:朝日新聞デジタル「佐藤天彦名人、人工知能に敗北決定 将棋・電王戦」

現状:多くの分野で活用されている

弱いAIは、すでにあらゆる分野において世界中で活躍しており、あなたの身の回りにあふれています。例えば、iPhoneに搭載されているSiri(シリ)や顔認証機能がついた温度計、映画配信サイトのレコメンド機能などが挙げられます。AIの応用技術の研究が進められれば、すでにあるAIの改良による性能の向上が期待できるだけでなく、新しい分野で便利な機能を持ったAIが誕生するかもしれません。

シンギュラリティは到来する?

強いAIの誕生に期待が膨らむなか、問題視されているのが「シンギュラリティは到来するのか?」という問題です。結論から言うと、シンギュラリティが到来するかどうかは誰にも分りません。

そもそもシンギュラリティとは、AIが人類の知能を超える転換点のことです。また、それによって人類の生活に影響が及ぶ未来のことまでを示す場合があります。

AI研究の第一人者であるレイ・カーツワイル氏は、2045年にAIが人類の知能を超える特異点が来ると予測しています。彼の想定するシンギュラリティとは、社会的な変革の過程の中の一つとして、AIと人類が共存する未来です。「人類は地球上に存在する重要性が低い生命体である」とAIが判断し、排除活動が開始されるといったSF作品の最悪のシナリオのようなものではありません。

一方で、現在のAI研究の方向性では、人間の脳の構造を再現するのは難しいため、シンギュラリティは訪れないとする見方もあります。例えば、現在のAI研究の技術があれば、弱いAIを組み合わせて、複数の分野に強い能力を持つAIが生まれるでしょう。しかし、そのAIはどの能力を使えば適切に問題に対処できるのかという、人間の脳では簡単に解決できる問題がクリアできません。

シンギュラリティの到来には、現在のAI研究とは全く別の研究が必要であるため、2045年までの達成が難しいというわけです。やはり現状としていえるのは、シンギュラリティの到来がいつになるのかは誰にもわからないということでしょう。

参考:日本経済新聞「シンギュラリティとは AIが人知を超える転換点

「強いAI」と「弱いAI」まとめ

強いAIとは、フィクションの中で出てくるような汎用性の高いAIです。一方で、弱いAIとは、特定の領域の能力に特化しているAIで、人間を凌駕するようなケースも出てきています。

今日では、広範囲の課題を総合的に考えて、最善の行動を選択することができる汎用型AIのことを強いAIとして、ほとんどイコールのものと捉えるのが一般的です。また、汎用性はないものの特定の分野では人間の能力を超えるような、特定型AIのことを弱いAIとして認識するのが一般的です。

また、AIが人類の知能を超える転換点であるシンギュラリティはいつ到来するのか、そもそも到来するのかは全くわかりません。私たちに必要なのは、最新のAI研究に関するニュースに触れつつ、情報のアップデートをすることなのでしょう。

この記事を書いた人

AIに関する情報を分かりやすく発信していきます。G検定取得。日々、最新のテクノロジーへのキャッチアップやデータサイエンスの学習に奮闘中。

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