AI(人工知能)の歴史。技術進歩の過程、今後の展望を年表で解説!

昨今「AI(人工知能)」という言葉を様々な場面で耳にすることが増えてきています。しかし、その言葉が生まれた背景やAIの進化の軌跡を正確に理解している人は少ないでしょう。

AIの研究は1950年代から始まり、ブームと低迷期を繰り返しています。今回はAIの歴史を年代順に詳しく解説していきます。AIが発展していく未来についても考察していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

AI(人工知能)とは?

AI(人工知能)とは、人間の脳に近い機能を持ったコンピュータープログラムです。その対応できる課題範囲や柔軟性の有無によって、強いAIと弱いAIに分類されています。ここからは人工知能の基本知識について抑えていきましょう。

人間の脳に近い機能を持ったコンピュータープログラム

AIは、言語の理解や推論、課題解決を人間の脳に代わって行うことができるコンピュータープログラムです。人間の発する言葉を理解して翻訳や変換を行う自然言語処理、将棋やチェスといった専門性の高い分野でプロ同様の知的理解を示すエキスパートシステム、画像データを解析して特定のパターンを検出する画像認識といった活用方法があります。確かに人工知能は人間の脳の仕組みを模したものですが、すでに人間以上の成績を上げるAIも誕生しています。

強いAIと弱いAI

AIは、大きく分けると強いAIと弱いAIに分類されます。強いAIとは人間と同じように現実社会の複雑な問題を解決できる、汎用性の高いAIです。アニメのドラえもんや鉄腕アトムが具体例と言えます。現時点では実現していないAIです。

一方で弱いAIとは、事前に学習した分野の範囲内において言語の理解や推論、課題解決ができる、汎用性の低いAIです。具体例としては将棋AIやチェスAIがあります。特定の分野では人間の能力を超えることができたという実験結果もあります。一方で想定外の状況では柔軟な対応ができないという点が最大の課題です。現在の人工知能研究は、強いAIの誕生に向けて進んでいると言っても過言ではありません。

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AIの歴史の全体像

AIは、1950年代の誕生以来約70年の歴史があります。AIに関する研究は徐々に盛り上がりを見せてきて、常に技術は発展し続けているというわけではありません。研究開発が活発になる「AIブーム」と研究が頓挫する「冬の時代」を繰り返しながら発展しています。現在は2000年代の冬の時代を越えて、第3次AIブームの真っ只中と言える時期です。

画像引用・参考:松尾豊『人工知能は人間を超えるのか ディープラーニングの先にあるもの』

AIの発展とブームの歴史年表

AIの歴史は「AIブーム」と「冬の時代」の連続によって説明することができます。ここからは、人工知能にどのような変化や進化があったのかを年代別に解説していきます。

画像引用:寺野隆雄「人工知能研究の過去・現在・未来 ー人工知能から人口知能へ」

1950年代:AIの誕生

1950年、AIの概念を提唱したのはアラン・チューリングというイギリスの数学者です。「機械(コンピューター)には思考力があるのか」という考察のもと、人間とのコミュニケーションが可能な機械を再現するために、チューリングテストと呼ばれる検証実験を行っています。

その後、1956年に行われたダートマス会議にて、アメリカの数学教授ジョン・マッカーシーにより、「人間のように考える機械」のことを「人工知能」と名づけられました。1950年代は人工知能が誕生した時代であると言えるでしょう。

1960年代:第1次AIブーム

最初のAIブームが巻き起こったのは1960年代のことです。コンピューターの性能が向上して「探索」と「推論」の精度が人間以上のパフォーマンスを示したことから、注目度が一気に高まっていきました。探索とは回答パターンを場合分けして、最終的に目的となる答えを探すプロセスのことです。また、推論とは人間の思考の方法を記号として示す方法のことを言います。

これにより、パズルやゲームなど特定のルールがある分野に対して、人工知能は大きな成果を上げることになります。特にこの時代に開発されたELIZA(イライザ)は現在のiPhoneのSiri機能の根幹システムとなっていることでも有名です。

1970年代:1回目の冬の時代(研究資金の枯渇)

1970年代から1980年代初頭は、AIにとって初めての「冬の時代」です。人工知能は特定のルールが存在する分野、特に計算や証明には能力を発揮することはできるものの、現実社会の複雑多岐な問題には対応できないことが明らかになります。こうして人工知能に関するプロジェクトに参加する企業は減少し、研究資金は徐々に枯渇していきます。この当時、実用的ではないという意味をこめて人工知能でも解ける問題のことを「おもちゃの問題(トイ・プロブレム)」と呼ぶ研究者もいました。

1980年代:第2次AIブーム

AIに再びスポットライトがあたったのは1980年代です。エキスパートシステムの開発により、第2次AIブームが巻き起こりました。エキスパートシステムとは、専門家のようにあらかじめインプットした知識やルールから問題解決を目指す手法のことです。この技術を活用した仕組みとして、楽天やAmazonのおすすめ商品表示が挙げられます。

1980年代後半:2回目の冬の時代(AI研究の低迷)

エキスパートシステムの台頭により2度目のAIブームが巻き起こったものの、1980年代後半にはエキスパートシステムにも限界が訪れます。問題点は以下の2つです。

  • 情報のインプットは手動で行う必要があった
  • 例外や矛盾点に対応する柔軟なAIは作れなかった

このような問題点に対処することができず、AIの研究は頓挫してしまいます。

2000年代:第3次AIブーム

2000年代以降の第3次AIブームは、それまでのAIの問題点を解決して技術的にも商業的にも大きな飛躍を遂げる時期です。ビッグデータと呼ばれる膨大なデータ群を人工知能に読み込ませること、これまで手動で行っていたデータのインプットを機械学習に行わせることによって効率化が達成されました。

画像引用:寺野隆雄「人工知能研究の過去・現在・未来 ー人工知能から人口知能へ」

そして、2006年にはディープラーニング(深層学習)が浸透して、コンピューターの予測や推論の精度が高められていきます。人工知能は情報の取捨選択や特徴量を自分自身で判断することが可能になり、より実用的な商品やサービスが拡大して行きました。

AIの今後

AIは、第3次AIブームの渦中で大きな進歩を遂げています。では、今後もこのような技術進歩は続いていくのでしょうか。ここからは人工知能の今後について予測されている出来事について解説していきます。

機械学習の精度が上がる

第3次AIブームの中で機械学習の精度が上がることが期待されています。そもそも機械学習は「教師データ」と呼ばれる事前学習が大切です。ビッグデータの蓄積と拡大によって、この教師データの質や情報量が増えていくことが予想されています。つまり人工知能は、より高精度の探索、推論、予測が可能となり、実用化に拍車がかかると考えられるでしょう。

参考:総務省「人工知能と機械学習」

ディープラーニングの発達が進む

2006年に開発されたディープラーニングは数年間のうちに確実に成長してきています。2012年にはディープラーニングに画像認識が適用され、高精度の画像抽出、分析が行えるようになりました。今後もディープラーニングの適用範囲は広がり続け、技術の発達や精度の向上が見られる可能性は高いでしょう。

人知を超える可能性がある

AIはビッグデータを機械学習によって取り込み、ディープラーニングでさらにその精度を高めていきました。こうして進化を遂げている人工知能ですが、研究者が懸念しているのは人間の人知を超えるAIが誕生することです。

この転換点のことをシンギュラリティ(技術特異点)と呼び、2045年にはその到来があると考えられています。人間の仕事や権限が急激に人工知能にとって代わられてしまう可能性があるのです。ただし現時点で開発されているAIは「弱いAI」であり、人間のように複雑な事象に対して柔軟に対応できる「強いAI」が必ずしも誕生するとは限りません。我々人類は人工知能研究の最新情報をアップデートして、未来に備える姿勢が大切なのではないでしょうか。

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AIの歴史まとめ

人工知能研究は1950年代からブームと低迷期を繰り返しています。新しい技術開発を皮切りに研究が加速する「AIブーム」と、人工知能の限界が証明され研究資金も減っていく「冬の時代」の連続です。現在は2000年代から始まっている第3次AIブームの真っ只中にいます。

ビックデータの活用により機械学習の質が向上すれば、ディープラーニングの技術がさらに発展していくことが期待できます。近い未来には人工知能を使った商品やサービスが充実して便利な生活が手に入るでしょう。一方でAIが人間の能力を超えるシンギュラリティ(技術特異点)が訪れれば、私たちの生活や雇用に大きな影響を及ぼしかねません。人工知能に関する最新情報に常に触れつつ、実用的な活用方法を模索していきましょう。

この記事を書いた人

AIに関する情報を分かりやすく発信していきます。G検定取得。日々、最新のテクノロジーへのキャッチアップやデータサイエンスの学習に奮闘中。

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