文系でもAI人材になれる?求められる能力と将来像を解説!

「AIを扱う人間は理系出身者が当たり前である。」という考えを持っている方も少なくないでしょう。しかし、AIがビジネスや社会のいたるところで活用され始めている現代において、AIを活用する「文系AI人材」の需要が大きくなっています。

今回は「文系AI人材」という言葉の意味とその特徴について解説します。文系AI人材が今求められている理由やより深く学びたい方向けにおすすめの本も紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

文系AI人材とは?

文系AI人材とは「文系出身のAIを扱う人材」のことであり、ビジネスの現場におけるAIの「使い手」です。AIの研究開発は理系出身者が行いますが、実際にAIを導入して使うのは文系出身者であることがほとんどです。例えば、阪急百貨店が導入しているAIを活用したバーチャルメイクアプリについて考えます。確かに、システムの開発や改修を行うのは理系出身の研究者ですが、顧客への説明や現場でAIを動かす仕事などは文系出身者が行います。AIが社会に浸透していく過程で、これからのAIの「使い手」である文系AI人材の需要は高まっていくはずです。

参考:日経クロストレンド「阪急百貨店がARメークアプリ導入 若い女性来店の呼び水に」

文系AI人材の特徴

文系AI人材は、視野を広く持っていて対人スキルが高い傾向があります。また、顧客と直接触れ合うことで売り上げにつながる職種についている場合が多いです。ここからは、文系AI人材の特徴について解説していきます。

視野を広く持っている

文系AI人材は、理系AI人材に比べて広い視野を持っていると言えます。理系の研究員は、AIの「作り手」として最新の論文や研究に焦点を絞り、知識の専門性を高めていく必要があります。そのため、他の分野の知識についてはどうしても無関心になりやすい傾向があるでしょう。一方で、文系はビジネスや教育、歴史や言語といった幅広い分野のポイントをかいつまんで学習しているため知識の幅が広く、社会全体を俯瞰する能力にたけていると言えます。

対人スキルが高い

文系AI人材は、コミュニケーション能力や雑談力といった対人スキルが高い傾向があります。つまり、優れた対人能力とバランス感覚を持っている人材であるとも言えます。国際情勢や顧客の温度感を敏感に感知することで、AIをツールの一つとして効果的に扱うことができると期待されています。

売り上げに直接つながる仕事を担当している

文系AI人材は、売り上げに直結する仕事を担当しているという特徴があります。仕事内容が顧客に対してAIシステムを使ったり、現場で説明したりすることであるためです。企業がAIを活用するメリットは、人件費の削減、業務効率化、売り上げの向上です。後者の達成のためには、文系AI人材の活躍が必要不可欠であると言えます。

文系AI人材が「今」求められている理由

文系AI人材は、第3次AIブームの中で強く求められている人材です。企業がAIを導入する傾向が加速すること、現場の人間もエンジニアとのコミュニケーションが求められることが理由に挙げられます。ここからは、それぞれの理由について詳しく解説していきます。

企業がAIを導入する傾向が加速する

画像引用:総務省「令和元年版 情報通信白書のポイント」

今後、ますます日本の企業でAIの導入は進んでいきます。総務省の発表(2018年)によると日本のAI導入率は世界に遅れをとっており、近年で急速にAIの導入が進む可能性は高いでしょう。同時に、AIを現場で扱う人材の需要も高まっていると言えます。

エンジニアとのコミュニケーションが必要

AIを導入することで大切になってくるのが、「使い手」と「作り手」のコミュニケーションです。例えば、使い手にAIの基礎知識がないと、作り手に対しての提案やフィードバックができません。よりよい製品やサービスを提供するためには、文系AI人材が現場の声を理系AI人材に正確に伝えてイノベーションを起こす必要があります。

文系AI人材に関するおすすめの著書と要約

文系AI人材についての知識を深めるのにおすすめの著書は以下の2冊です。

  • 文系AI人材になる: 統計・プログラム知識は不要
  • 超実践! AI人材になる本-プログラミング知識ゼロでもOK

ここからは、それぞれの本の要約を紹介していきます。

文系AI人材になる: 統計・プログラム知識は不要

ZOZOテクノロジーズ取締役の野口竜司氏の著書です。著者は、AIの導入が進むことで文系職が奪われるのではなく、むしろ共存する生活が訪れると主張します。その中でAIと人間の分業の形は、以下の5つにカテゴライズしています。

  • 一型:人だけで仕事をする
  • T型:人の仕事をAIが補助し、人ができていたことを効率化する
  • O型:人の仕事をAIが拡張し、人ができなかったことを可能にする
  • 逆T型:AIができない仕事を人が補助する
  • I型:人の仕事をAIが完全に代行する

また、分業を達成するためには文系AI人材の育成が不可欠です。人材育成のためには以下の4つのステップが必要です。

  1. AIのキホンを丸暗記する
  2. AIの作り方をザックリ理解する
  3. AI企画力を磨く
  4. AI事例をトコトン知る

筆者は、変化を恐れずにAI社会をけん引する人材となることを推奨しています。専門用語や複雑な知識も図解を用いることで、初心者でも分かりやすくかみ砕いて説明している著書です。

画像引用・参考:野口竜司「文系AI人材になる: 統計・プログラム知識は不要」(Amazon)

超実践! AI人材になる本-プログラミング知識ゼロでもOK

AI研究家の大西加奈子氏の著書です。著者は「自社の『ビジネスロジック(業務の流れや仕組み)』を理解している文系AI人材が、エンジニアとのディスコミュニケーションを解決するキーマンになる」と主張しています。文系AI人材に必要なスキルは、以下の3つです。

  • アイデアを出す「企画力」
  • データをまとめる「分析力」
  • プロジェクトを管理する「推進力」

著書内では、文系AI人材のことをボート競技のコックスに例えて分かりやすく解説してます。コックスとは、ボートの先頭でクルーとは逆向きに座ってレースの状況を俯瞰することができるポジションです。レース中の指示が順位を左右するため責任は重大ですが、やりがいのあるポジションです。文系AI人材も同様に、現場での責任は重大ですが、AIの効果を決定づける大切な職種であると言えます。

著者はこの本を通して、エンジニアと言葉のキャッチボールを交わすことができ、AIプロジェクトを推進することが可能な文系AI人材を育成することを目的としています。これからのAI社会に対応するために最低限必要な知識を基礎から学びたい方におすすめです。

画像引用・参考:大西加奈子「超実践! AI人材になる本-プログラミング知識ゼロでもOK」(Amazon)

文系AI人材の育成に関する課題

文系AI人材は、これからの社会に強く必要とされています。その一方で、そういった人材が十分に育成されていないのが現状です。その背景には、日本の「文理の壁」が厚いこと、育成する教育者が不足していることが挙げられます。ここからは、これからの課題の詳細について触れていきましょう。

日本ではまだまだ「文理の壁」が厚い

文系AI人材が浸透しない理由として、日本ではまだまだ「文理の壁」が厚いことが挙げられます。現場の人間は、詳細な専門知識を知っている必要はありませんが、技術をうまく使うために最低限の基礎知識を頭に入れておく必要があります。

しかし、日本では「文系は文系科目、理系は理系科目だけ学習する」という傾向が強いのが実情です。文系AI人材を増やすためには、文理融合を進める必要があります。文系は理系の内容に興味を持ち、理系は文系の内容に興味を持つことが大切です。

人材を育成する教育者が不足している

文系AI人材を育成する教育者が不足していることも課題の一つです。教育者の不足により、学校教育の過程でAIに関する基礎知識を学習する機会がないことが、日本における厚い「文理の壁」の形成につながっています。文系AI人材として働く営業職の人材、AIを専門に研究する学者を増やすためにも、次世代の教育者の育成を行うことが急務であると言えます。

文系AI人材まとめ

文系AI人材とは「文系出身のAIを扱う人材」のことであり、ビジネスの現場におけるAIの「使い手」です。理系AI人材に比べて、社会全体を俯瞰する能力にたけており、対人コミュニケーションのスキルが高いのが特徴です。AIがビジネスや社会のいたるところで活用され始めている現代において、AIを活用する「文系AI人材」の需要が大きくなっています。

一方で、日本特有の厚い「文理の壁」や文系AI人材の教育者の不足が課題です。AIの導入を検討しているビジネスオーナーや現場の管理職の方のみならず、勤めている企業でAIシステムを現場で使用することになった営業職の方も、ぜひ一度「文系AI人材」に関する本を読んで知識を深めてみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

AIに関する情報を分かりやすく発信していきます。G検定取得。日々、最新のテクノロジーへのキャッチアップやデータサイエンスの学習に奮闘中。

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